NEXT WEEKEND TO SENDAI 週末仙台

西山繭子さんの文庫本片手の旅

本と珈琲と仙台と。

歴史と文化の都・仙台に欠かせないのが、カフェでのひととき。
いぶし銀の老舗から若手オーナーが作り上げるこだわりの空間まで、
個性的でくつろげるお店がいっぱい。仙台を舞台に繰り広げられる小説のページをめくれば、
週末旅もよりいっそう深まること間違いなし!

Photograph:Yosuke Koyama / Styling:Mana Takizawa / Hair & Make-up:Noriko Shoji(MOC)

book cafe 火星の庭

仙台のブックカフェと言えばココ!珈琲と古書が誘うくつろぎ空間

仙台におけるブックカフェの元祖。店内は古書コーナーとカフェコーナーに分かれ、購入した本のページをめくりながら、ソファでくつろいでいる人も。古書の品揃えはアート、カルチャー、文学系が中心で、新刊書やCD、中古レコードも扱っている。国産小麦と天然酵母で作られたパンや自家製スイーツ、ネルドリップで丁寧に淹れたコーヒーも絶品。

SHOP INFORMATION

住所:仙台市青葉区本町1-14-30 ラポール錦町1F /
電話番号:022-716-5335 / 営業時間:11:00~19:00 / 定休日:火・水

ガーデンブレンド(中煎り)¥400、ガトーショコラ¥450、
セイロン・カリー¥750(ドリンクとセットで¥100引き)(以上、税込)

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はじめは、季節外れの石焼きいも屋の音かと思った。東北のこの地では、「いしやーきいもー」の声のかわりに、釜の煙突に取り付けられた笛の音で車の場所を知らせる。-『誰かがそれを』 佐伯一麦

仙台を代表する作家、佐伯一麦。豊かな感性から紡がれる物語は、人々や土地への優しい眼差しと、そこはかとない艶っぽさを感じさせる。『誰かがそれを』『ア・ルース・ボーイ』など、仙台を舞台にした名作も多い。

その街… 仙台には、私が生まれて初めて愛した人が暮らしていた。愛されていない、ということがわかっていたくせに、私は彼が好きで好きでたまらなかった。-『無伴奏』小池真理子

短篇の名手と言われる直木賞作家・小池真理子。多感な高校時代を過ごした仙台を舞台に繰り広げられる『無伴奏』は、半自叙伝的小説。成海璃子主演で2016年には映画化も。

café haven't we met

ゆったり時が流れる隠れ家カフェで週末旅に落ち着いたひとときを

官庁街の一角にある古いビルの3階。急な階段を上って扉を開くと、木のぬくもりに満ちた空間がふっと現れる。オススメは窓辺のカウンター。本を片手に柔らかな陽射しに包まれていると、そこだけ時がゆったり流れているかのよう。仙台駅近くに2号店のcaféhaven't we met opusもあるが、静かに過ごしたいならこちらの本店がオススメ。

SHOP INFORMATION

住所:仙台市青葉区国分町3-9-2 3F /
電話番号: 022-212-1755 / 営業時間:11:00~20:00 / 定休日:水

ブレンドコーヒー ホット¥500、アイス¥550、
ベイクドチーズケーキ¥450、ベーコンポテトサンド¥720

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カフェ モーツァルト アトリエ

広瀬川河畔を見下ろす癒やしビュー!テラス席で杜の都を満喫!

仙台でカフェと言えば、必ず名前の挙がる名店「café Mozart」。伝説のスポット・仙台私立現代美術館のあったスペースを受け継いだこちらの店舗は、そのロケーションも大きな魅力。地下へと続く階段を下りると、陽光にあふれた癒やしの空間が広がる。テラス席に出ると、生い茂った樹々の向こうに広瀬川が。絶景を眺めながらくつろぎのひとときを!

SHOP INFORMATION

住所:仙台市青葉区米ヶ袋1-1-13 B1F /
電話番号: 022-266-5333 / 営業時間:11:00~20:00(ランチ11:30~14:30) / 定休日:無

モーツァルトブレンド¥470、ケーキセット¥750~、
ランチメニュー・パスタセット¥900(以上、税込)

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稔は広瀬川畔から青葉城址にかけていくつかの草叢があったことを思いつく。女の子との散策は青葉城址へ向うがよい。彼は歩きながら彼女に、階段教室で講義をする教授たちの小さな愛すべき癖や、東大の学生寮のお話にならない乱雑さや、知的な刺激と冒険に充ちた寮の東大生たちとの交際について語ることになるはずだ。-『青葉繁れる』井上ひさし

山形に生まれ、高校時代を仙台で過ごした劇作家・小説家の井上ひさし。宮城県仙台第一高等学校在校中の思い出をもとに綴ったのが名作『青葉繁れる』だ。戦後間もない仙台で、抱腹絶倒の事件を巻き起こしながら、恋に悩み、反骨精神みなぎる若者たちの青春を生き生きと描いたこの作品は、今も変わらず仙台一高生・OBのバイブルなんだそう。

「妊娠した」と母が告白したのは、仙台の七夕まつりを見ている最中で、混雑した人波の中で一歳半前だった私は、父に負ぶわれながら眠っていた。-『重力ピエロ』伊坂幸太郎

学都仙台を支える東北の雄・東北大学で学んだ人気作家、伊坂幸太郎。仙台に居を構え、地元を舞台に数多くの作品を執筆し、映画化された作品も多い。連続放火事件の謎を解く2人の兄弟を描いた『重力ピエロ』もそのひとつ。清々しくも切ない伊坂ワールドをたっぷり味わえる。

純喫茶 星港夜(シンガポールナイト)

優しい灯りとアンティークに囲まれ異国情緒と懐かしさにひたる夜

大通りから少し歩いたところに煙るように浮かび上がる柔らかな灯り。ほの暗い道を、灯台を目指すかのようにたどり着く。蓄音機、オルガン、ランプ……店内のあちこちに置かれたアンティーク。異国情緒が漂いながらも、どこか懐かしい気分にさせられる。クラシックの名曲から名づけた店主自慢のオリジナルブレンドがまた格別の味わい。

SHOP INFORMATION

住所:仙台市青葉区上杉1-12-1 /
電話番号:022-222-2926 / 営業時間:13:30頃~深夜 / 定休日:無(臨時休業あり)

オリジナルブレンドコーヒー 無伴奏¥680、運命¥630など、
たい焼き¥230、ベイクドチーズケーキ¥380(以上、税込)

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西山繭子さんと歩く仙台の知層に触れる旅

伊達家の歴史と文化が土地に息づき、多くの作家・芸術家によって物語が生み出される街、仙台。
その仙台の知の遺産の記憶=知層を西山さんと巡る旅に。
市中心部から気軽に訪れることのできる場所をご紹介。

仙台市博物館

「伊達家の城下町として栄えた仙台に関する展示が盛りだくさん。期間限定公開の伊達政宗公が身につけていたといわれる、粋な陣羽織もいつか見てみたいです。博物館の周りに広がる広瀬川の景色も印象的でした」

仙台伊達家寄贈の資料群を保管・展示・研究するため1961年、仙台城三の丸跡に開館。慶長遣欧使節の大使・支倉常長(はせくらつねなが)が海外から持ち帰った資料(国宝・ユネスコ記憶遺産)など貴重な品々を所蔵。「伊達者」の片鱗を感じさせる政宗公の甲冑や工芸品は一見の価値あり。

住所:仙台市青葉区川内26 / 電話番号:022-225-3074 / 営業時間:9:00~16:45(入館16:15まで) / 休館日:月(祝・振替休は開館)、祝・振替休の翌日(土日祝の場合は開館) / 常設展観覧料:一般400円

「野馬図屛風」をじっくり眺める西山さん。他に幅8mもある巨大な絵図「奥州仙台領絵図」なども人気。展示資料は季節ごとに入れ替わる。

慶長遣欧使節に関連する展示資料も数多く観覧することが可能。右の国宝・支倉常長像は、日本に残る油絵のなかで、実在の日本人を描いた最古の作品と言われている。この肖像画を含む慶長遣欧使節関係資料3点は、ユネスコ記憶遺産にも登録されている。

仙台の歴史が一堂に会した展示品の数々。仙台の知層について詳しく知ることのできる常設展の他、特別展・企画展なども随時開催。(※資料により展示期間が異なります。詳しくはお問い合わせを)

ミュージアムショップでは、伊達家の歴史にまつわる本なども販売。陣羽織の絵柄がデザインされた文房具なども見つかる。

先進的だった伊達政宗公の外交政策の一環として、約400年前に支倉常長ら外交使節がヨーロッパに派遣された。そこで持ち帰った資料の数々がユネスコ記憶遺産に登録されている。

仙台市天文台

「オリジナルプログラムの美しいプラネタリウムや、天体望遠鏡など、こんなに身近に星空を感じたのは久しぶりです。子供も大人も楽しめる施設ですね」

旧天文台の老朽化に伴い、2008年に移転・開台された仙台市天文台。仙台駅から秋保温泉に至る蕃山丘陵(ばんざんきゅうりょう)上にあり、プラネタリウムが併設されている。「宇宙を身近に」をコンセプトに、歴史や音楽、芸術などとコラボレーションした様々なイベントを開催。

住所:仙台市青葉区錦ケ丘9-29-32 / 電話番号:022-391-1300 / 営業時間:9:00~17:00(土~21:30)(入館は閉館30分前まで、土は展示室17:00まで) / 休館日:水・第3火(祝日の場合は翌平日)、年末年始 / 料金:【展示室】一般600円 【プラネタリウム】一般600円 【セット券(展示室+プラネタリウム)】一般1000円

展示室は「地球」「太陽系」「大宇宙」「天文学の歴史」の4つのエリアに分かれており、大きな太陽系模型やCG映像などで天文の世界を楽しく探求できる。

仙台からは車で約30分。バスでは仙台駅からタケヤ交通の「秋保・川崎 仙台西部ライナー」の仙台市天文台で降りるとすぐ。

左・SNSで人気に火がつき、完売日も出るなど話題の仙台市天文台オリジナルの「アースキャンディ」。右・入り口には旧天文台で使っていたプラネタリウムが展示されている。

公開天文台の中では国内4番目の大きさを誇る「ひとみ望遠鏡」。毎週土曜日晴天時には、ひとみ望遠鏡を使った天体観望会を開催。

美しい星空とともに、立体的で迫力ある映像を投影するプラネタリウムは、見る人を幻想的な宇宙空間へと誘う。

仙台文学館

「作家の端くれとしてとても刺激を受けたのが、ここ仙台文学館。仙台という街がなぜ作家に愛され続け、同時に多くの物語が生まれているのか、さらに興味が湧いてきました」

1999年に開館。9年間在任した初代館長の井上ひさしを始め、仙台や宮城県に縁の深い近代文学に関する資料の収集・展示を行っている。常設・特別・企画展なども閲覧可能。台原森林公園の西側に隣接し、市内とは思えない静謐な空間に佇んでいる。

住所:仙台市青葉区北根2-7-1 / 電話番号:022-271-3020 / 営業時間:9:00~17:00 / 休館日:月(休日の場合は開館)、祝翌日、1~11月の第4木(休日は開館)、12/28~1/4 / 常設展観覧料:一般400円(※10月以降変更の可能性あり)

伊集院静や伊坂幸太郎、小池真理子などを始め、仙台に縁のある作家の作品や、仙台を舞台とした作品が陳列されている。

「うたのことばに生きて」のコーナーには童謡詩人のスズキヘキや彼らに影響を与えた鈴木三重吉の「赤い鳥」が取り上げられている。

常設展示室に向かう廊下には和紙で作られた左右の壁から、淡い光が投げかけられる。

愛と反骨をユーモアに包み、あるときは小説、あるときは演劇を通して戦後の日本文学に多大なる影響を与えた井上ひさし。その作品や思想は今なお、多くの世代に支持されている。

初代館長だった井上ひさしの作品や原稿を展示するコーナーもある。

ギャラリー ターンアラウンド

「ギャラリーにカフェが併設されていて、コーヒーを飲みながら気軽にアートに触れられるのが魅力的ですね。展示中だった地元の作家さんのアート作品も、独創的で面白い!」

コンテンポラリーアートを中心に展示を行うギャラリーに、コーヒーなどを楽しめるカフェ〝ハングアラウンド〝を併設。オーナーの関本さんは建築の仕事の傍ら市民レベルでギャラリーの運営を行うユニークな経歴の持ち主。アート関係者の交流の場にもなっている。

住所:仙台市青葉区大手町6-22 久光ビル1F / 電話番号:022-398-6413 / 営業時間:11:00~20:00、日祝11:00~18:00 / 休館日:月 入場無料 カフェスペースも併設

カフェスペースでは、今まで開催した展覧会の記録や様々なアーティストの作品が保存され、コーヒーやお酒を楽しみながら閲覧することができる。

アート作品の展示だけでなく、映画上映やトークショー、舞台や音楽のライブ、ワークショップなど多彩な催しが行われている。

訪れた日は、地元の作家・大槻英世さんによる「冬の絵」の企画展中。マスキングテープを使用した作品群をじっくり眺める西山さん。

地元仙台の被災したアーティストの支援も手がけるなど、様々なアーティストが集まり、交流するサロン的な場にもなっている。

物語のある街。

世界中を旅しているアメリカ人文学者が「日本は世界で一番コーヒーが美味しい」と先ごろの講演会で話していた。ここ近年、日本におけるコーヒー文化の発展には目を見張るものがある。街には多くのチェーン店が軒を連ね、コンビニエンス・ストアでは安価なドリップコーヒーを買うことができる。コーヒーの芳しい風味がいつでもどこでも、まさしく24時間手に入る時代だ。それも喜ばしいことではあるが、その気軽さの中では手に入れられないコーヒーの魅力というものがある。店の扉を開けた瞬間にふわりと漂ってくる香り、ゆっくりと入れられる一杯にかけられた懇切さ、そしてそれを口にする豊潤な時間。一杯のコーヒーがもたらす幸せは、その風味以上に奥深い。ここ仙台で訪れたカフェで、私は改めてそんなことを感じた。

仙台には親戚が暮らしていることもあり、幼い頃から何度も足を運んでいる。その間に、もちろん街は様子を変えているのだが、いつ訪れても仙台という街は、人をすっと受け入れる寛容さがある。駅前はビルが建ち並び、たくさんの人々が行き交う東北随一の大都市の姿をみせる。しかし少し足をのばせば、ゆったりとした広瀬川が流れ、その向こうには緩やかな青葉山を望むことができる。先ほどまでの喧騒が嘘のように、途端に穏やかな空気が訪れる人を包みこむ。この変化に富む美しい土地が、これまでたくさんの文学を生みだしてきた所以なのかもしれない。

明治30年、一冊の詩集が刊行された。『若菜集』、青春の哀歓を詠う詩のほとんどを、作者である島崎藤村はここ仙台で詠んだ。藤村はのちに「あの東北の古い静かな都会で私は一年ばかりを送った。私の生涯はそこへ行って初めて夜が明けたやうな気がした」と回想している。『若菜集』は作家・島崎藤村の文学生涯の処女作である。文学の師と仰いだ先達の自殺、兄の収監、恋人の死にうちのめされた青年がやってきた仙台。青年はそれまでの心の煩いから離れ、ここで新しい青春を手に入れ、文学という世界をひた進んでいく。はるか昔からこの街には文学の香りが漂っていたのだ。

一人で旅をする時、私の傍らにはいつも本がある。いくつか選ぶ中で、必ず携えるのは、その旅先を舞台にした小説だ。仙台でその本選びに困ることはない。たくさんの作家がこの土地で物語を紡ぎだしてきた。それを手に私は街を歩く。物語の主人公もここを歩いたのかもしれないなどと想像を膨らませると、自然と足が軽やかになる。碁盤の目の形をした街は、旅人に親切だ。この辺りに『重力ピエロ』の主人公、春が消した落書き跡があるかもしれない。『無伴奏』で渉が響子の肩をふわりと抱いたのは、この辺りだろうか。小説の世界が、仙台の街をさらに鮮やかに変えてゆく。歩き疲れたら休めばいい。一人旅はいつだって自由で気まぐれだ。旅人は、居心地の良い場所を求め、街を彷徨う。

旅先で店の扉に手をかける時、少しだけその指先に緊張が走る。たとえどんなに素敵な外観であろうと、店の良し悪しというのは、実際に足を踏み入れるまでわからない。インターネットの口コミだって、あてにはならない。数年前、私はスマートフォンを手放した。きっかけは、やはり旅だった。見知らぬ土地で、右も左もわからぬ私は、小さな液晶画面に頼りきっていた。そうして導かれた旅は、円滑ではあったが、誰かの足跡をなぞっていることでしかないと気がついた。指先に僅かな勇気をこめて、店の扉を開ける。その瞬間、ふわりと鼻先をくすぐるコーヒーの香りと、「いらっしゃいませ」という優しい声に、ぴんと張っていた心の糸が柔らかくなる。頼んだコーヒーが出てくるまで、ぼんやりと店内を見渡した。誰もが思い思いの時間を過ごしている。さあ、私も物語の続きを読もう。私は再びページをめくり、誰のものでもない自分だけの旅を続ける。

MAYUKO NISHIYAMA西山繭子

女優・作家。大学在学中にCMでデビュー。
以降女優としてドラマ『瑠璃の島』や『愛なんていらねえよ、夏』などに出演。
2007年に初の書下ろし小説『色鉛筆専門店』を刊行。2014年は映画『バンクーバーの朝日』のノベライズも手掛け、話題に。
父は作家の伊集院静氏。

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